通信制高校に留年はある?単位制の仕組みと、3年で卒業する単位の取り方

通信制高校には「毎日登校しなくてもよい」「自宅で学習できる」などのメリットがありますが、多くの通信制高校に「留年がない」のも特徴のひとつです。
このページでは、通信制高校の留年の仕組みと、3年で卒業するための単位の取り方、在籍できる年数などを説明します。
通信制高校に留年はあるか
多くの通信制高校には留年がありません。その理由は「多くの通信制高校は単位制で、学年による区分がないから」です。
まず、「留年」とは何かを説明します。
留年というのは、次の学年に進級できないことです。留年は「落第」と同じ意味で、正式には「原級留置(げんきゅうりゅうち)」と言います。このページでは「留年」という言葉でご説明をしていきます。
義務教育における留年
小学校、中学校は義務教育です。文部科学省によると、制度上は原級留置(留年)が想定されているものの、運用としては基本的に年齢主義(年齢に応じて進級・卒業する)とされています。
そのため、もし仮に出席日数が少なくても、多くの場合は進級や卒業ができます。
出典:文部科学省『(参考)履修主義と修得主義、年齢主義と課程主義』
高校の留年
学年制の高校(全日制・定時制)では、留年があります。留年になるのは、主に次のような場合です。
- 出席の基準に満たしていない科目がある
- 成績の基準に満たしていない科目がある
1の出席の基準は登校した日数ではなく、科目ごとの授業を受けた時間数で判断されます。
2の成績の基準は、定期テスト(中間試験や期末試験)や普段の授業態度、提出物などで判断され、基準に満たない科目があると進級できないことがあります。基準は学校ごとに違います。
例えば京都府立学校の規則では、校長は生徒を「原学年に留め置くことができる」とされ、この規定は単位制による課程には適用されません。留年になると、もう1度同じ学年でやり直さなければなりません。
出典:京都府『京都府立学校の管理運営に関する規則』(第18条)
単位制の高校には学年ごとの留年がない
単位制は、学年の区分がなく、決められた単位を修得すれば卒業できるというものです。昭和63年度から定時制・通信制で導入され、平成5年度からは全日制でも設置できるようになりました。
学年の区分がないため、学年をやり直す留年はありません。多くの通信制高校も単位制です。
通信制の原級留置の数(令和6年度)
文部科学省の調査では、令和6年度に通信制の課程で原級留置となった生徒は2,940人で、在籍者の1.0%でした。この調査の原級留置は、令和7年3月末の時点で、進級または卒業が認められなかった生徒の数です。学年をやり直すことだけでなく、卒業が認められなかったことも含む数です。
出典:文部科学省『令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(e-Stat、表6-7)
全日制の高校で、欠課時数によって留年が決まる仕組みは、次の記事で紹介しています。
「留年」と「卒業が延びる」の違い
在学年数は3年以上と決められていますが、「1年生」「2年生」といった学年に分けられているわけではありません。3年以上かけて全部で74単位を修得すれば卒業できます。
もしなんらかの事情で入学1年目に思うように勉強が進まず10単位しか修得できなくても、2年目以降に残りの単位を修得すれば卒業できます。ただし、必要な単位が取れないと、卒業の時期は延びます。
令和6年度の卒業生のうち、6年以上在籍していた人は515人(0.6%)でした。
出典:文部科学省『令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について』(⑧令和6年度卒業生数(在籍期間別))
卒業までにかかる年数の数え方は、次の記事で紹介しています。
3年で卒業するための単位の取り方
1年あたりの単位の目安と、履修の上限
卒業に必要な74単位を3年で修得するには、1年あたり約25単位が目安です(74÷3の当サイトの計算)。1年に履修登録できる単位数には、学校ごとに上限があります。
| 学校 | 1年に履修できる単位 |
|---|---|
| 東京都立新宿山吹高等学校(通信制課程) | 31単位まで(令和7年度の案内) |
| NHK学園高等学校 | 39単位まで |
例えば1年目に10単位しか修得できなかった場合、残りの64単位を2年で修得するには、1年に32単位が必要です(当サイトの計算)。上限が31単位の学校では、3年では届かず、卒業は4年目以降になります。
出典:東京都立新宿山吹高等学校『令和7年度 第2学期 転学・編入学 募集案内』(通信制課程)、NHK学園高等学校『よくあるご質問』(2026年10月時点)
年度の途中で転入したときの単位
前の高校で修得した単位と在学した期間は、転入先の学校が認めれば引き継げます。履修中の科目の扱いは学校によって違い、東京都立新宿山吹高等学校は、今年度の履修中の単位は認めないとしています。
前期・後期の2学期制で、学期ごとに入学・卒業できる学校もあります。長野県長野西高等学校の通信制は令和7年度から2学期制にし、10月入学・9月卒業を始めました。ヒューマンキャンパス高等学校は、学則で入学を4月と10月、卒業を9月と3月としています。
出典:e-Gov法令検索『単位制高等学校教育規程』(第3条・第5条・第7条)、e-Gov法令検索『学校教育法施行規則』(第104条)、東京都立新宿山吹高等学校『令和7年度 第2学期 転学・編入学 募集案内』(通信制課程)、長野県長野西高等学校 通信制『学校案内』、学校法人佐藤学園ヒューマンキャンパス高等学校『学則』
転入の条件と時期は、次の記事で紹介しています。
通信制高校の卒業までの流れ
通信制高校には学年がなく、3年以上かけて74単位を修得すれば卒業できます。
また、通信制高校は学校での一斉授業がありません。次のような流れで単位を修得していきます。
- 教科書(紙またはデジタル)を見ながら勉強をする
- レポートを提出する
- スクーリングに参加する
- 単位認定試験を受けて合格する
これを繰り返して74単位を修得します。
卒業には、これ以外に特別活動に30単位時間以上参加する必要があります。
通信制高校を卒業するまでの年数
通信制高校の生徒は、卒業までに何年くらいかかっているのでしょうか。
通信制高校の在籍期間(卒業するまでの年数)は、公立と私立で大きく異なります。
文部科学省の「令和7年度通信制高等学校実態調査」で、令和6年度の卒業生(90,872人)の在籍期間を見ると、下記のようになっています。
| 在籍期間 | 卒業生に占める割合 |
|---|---|
| 1年未満 | 公立:3.2% 私立(学校法人立):6.6% 私立(株式会社立)※:7.9% 全体:6.4% |
| 1年以上3年未満 | 公立:38.5% 私立(学校法人立):39.6% 私立(株式会社立)※:62.8% 全体:42.0% |
| 3年間 | 公立:33.4% 私立(学校法人立):51.3% 私立(株式会社立)※:28.0% 全体:47.0% |
| 3年より長く4年未満 | 公立:3.9% 私立(学校法人立):0.9% 私立(株式会社立)※:0.9% 全体:1.2% |
| 4年間 | 公立:11.6% 私立(学校法人立):0.9% 私立(株式会社立)※:0.4% 全体:2.0% |
| 4年より長く6年未満 | 公立:4.8% 私立(学校法人立):0.4% 私立(株式会社立)※:0.1% 全体:0.8% |
| 6年以上 | 公立:4.5% 私立(学校法人立):0.1% 私立(株式会社立)※:0.0% 全体:0.6% |
卒業生の数は公立9,215人、学校法人立71,729人、株式会社立9,928人で、割合は人数から計算した値です。
出典:文部科学省『令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について』(⑧令和6年度卒業生数(在籍期間別))
※:私立の通信制高校には、学校法人だけでなく株式会社が設立・運営しているところもあります。構造改革特区の制度で、2003年(平成15年)から株式会社が学校を設置できるようになりました。令和7年度の株式会社立の通信制高校は15校です。
なお、在籍期間が3年未満という人がいますが、これは、全日制高校に進学した後に通信制高校に転入や編入をしたことが理由だと考えられます。
転・編入の場合は、全日制高校で修得した単位が引き継げます。それを利用して通信制高校を卒業すると、3年未満の在籍でも卒業が可能になります。
公立の通信制高校の在籍年数の傾向
公立の通信制高校では、1年以上3年未満(38.5%)と3年間(33.4%)が多いのですが、4年間が11.6%、4年より長く6年未満が4.8%、6年以上が4.5%いて、比較的時間をかけて卒業する傾向にあります。
令和7年5月1日時点で在籍している生徒のうち、4年以上在籍している生徒の割合も、公立は25.6%と高くなっています(学校法人立は1.9%、株式会社立は1.4%)。
出典:文部科学省『令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について』(⑦令和7年5月1日時点の在籍生徒数のうち4年以上在籍している生徒数)
私立の通信制高校の在籍年数の傾向
私立の通信制高校は、学校法人立では3年間(51.3%)、株式会社立では1年以上3年未満(62.8%)で卒業する生徒が最も多くなっています。
3年より長くかけて卒業する人は、公立の24.8%に対して、学校法人立は2.4%、株式会社立は1.3%と、かなり少なくなっています(上の表の人数から計算)。
また、1年以上3年未満で卒業した人が多いのは、転入・編入した生徒が多いためと考えられます。
在籍できる年数の上限
在籍できる年数に上限を設けている学校があります。例えば東京都立一橋高等学校は、最大6年間まで在籍できます。一方、ヒューマンキャンパス高等学校の学則のように、修業年限を3年以上と決めているだけで、上限を書いていない例もあります。上限の有無は、入学を考えている学校で確かめられます。
出典:東京都立一橋高等学校 通信制『Q&A』、学校法人佐藤学園ヒューマンキャンパス高等学校『学則』
通信制高校を卒業する条件
- 転入前の高校を含め、3年以上の在籍期間がある
- 74単位以上を修得する
- 特別活動に30単位時間以上参加する
上記の条件を満たせば通信制高校を卒業することができます(学校教育法第56条、学校教育法施行規則第96条、高等学校学習指導要領)。
卒業までの進め方を学校で確かめる点
通信制高校の授業料は、学校によって、受講する単位ごとに計算する「単位制」と、月や年ごとに決まった額を納める「定額制」があります。単位制の学校では、3年で卒業できなくても、修得できなかった単位の分の授業料がそのまま毎年上乗せされるわけではありません。
ただし、定額制の学校では、在籍が長くなればその分の授業料がかかります。また、授業料を支援する国の就学支援金は、通信制では原則48月(4年)までで、単位制の授業料は通算74単位までが支給の対象です。在籍が長くなると就学支援金が受けられなくなり、自己負担が増えることがあります。
出典:文部科学省『高等学校等就学支援金制度に関するQ&A』、文部科学省『高等学校等就学支援金・新制度の概要』
また、学校の設備費やスポーツ共済保険の掛け金などは、毎年支払うようになっているところがあります。
できるだけスムーズに卒業するためのポイントをご紹介します。
- 何年で卒業するのかを先に決める
- それに沿って計画を立てる
- 計画に従って学習を進める
- 担当の先生とこまめに連絡を取る
- 特別活動やスクーリングの日程をチェックしてきちんと参加する
自己管理を意識する
全日制高校は学校が組んだ時間割に沿って学習を進めていきます。たとえ気が乗らなくても授業に出れば自然と教科書を開いて勉強するようになります。
しかし、通信制高校は時間割がありません。自分で計画を立てて、それに沿って進めるという自己管理が求められます。
最初に、何年で卒業するかを決めて、それに見合う計画を立てる方法があります。卒業には、特別活動やスクーリングへの参加も必要です。
それらの日程は学校が公開しているので、早めに確かめられます。
通学コースのある通信制高校
通信制高校は自宅や図書館、仕事の休憩中など場所を選ばず、すき間時間を利用して勉強できるのがメリットです。
令和7年度の文部科学省の調査では、週5日通学のコースがある学校は323校中90校、週3日のコースは63校、週1日のコースは128校でした。
出典:文部科学省『令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について』(p.19)
通学コースでは、学校で先生に質問したり、ほかの生徒と一緒に学んだりできます。
サポートが手厚い学校を選ぶ
サポートの手厚さは学校によって違います。私立の通信制高校には、次のように個々の生徒のサポートに力を入れているところもあります。
- 中学校でのつまずきを見つけて復習をかねて指導する
- 不登校や対人面で不安がある人は個別指導をする
- 自習室や個別指導、少人数クラスなどがある
- カウンセラーがいて相談に乗ってくれる
- いつでもネットで相談や質問ができる
こうしたサポートの内容は、学校の資料で比べられます。なお、サポート校の費用は、国の就学支援金の対象になりません。
出典:文部科学省『高等学校等就学支援金制度に関するQ&A』(Q7)
通信制高校の留年と卒業のまとめ
通信制高校の留年と卒業について、この記事で紹介したことは次のとおりです。
- 多くの通信制高校は単位制で、学年をやり直す留年はない
- 必要な単位が取れないと、卒業の時期は延びる
- 3年で卒業するには1年に約25単位が目安で、履修の上限は学校ごとに違う
- 年度の途中で転入すると、履修中の科目の単位は認められないことがある
- 在籍できる年数に上限を設けている学校がある
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