通信制高校を決める前にチェック~公立と私立の通信制高校はここが違う~
ひと口に「通信制高校」と言っても種類はさまざまです。特に公立と私立では授業料もコースも異なります。
このページでは公立と私立の通信制高校の違いについてご説明します。
公立と私立の通信制高校の設置母体と学区の違い
公立の通信制高校と私立の通信制高校では、設置(運営)母体や学区が異なります。
公立の通信制高校とは
公立の場合は、都道府県が通信制高校を設置していて、1都道府県内に1校以上の通信制高校があります。中には複数の学校がある都道府県もあるため、全国では約70校ほどが存在します。
公立の通信制高校の学区は、基本的には同一都道府県内に住む人または勤務する人が対象になっています。
主な公立の通信制高校
全国の主な地域の公立の通信制高校をご紹介します。
都道府県 | 学校名 | 入学金 | 授業料 |
---|---|---|---|
東京都 | ・一橋高校 ・新宿山吹高校 ・砂川高校 |
336 円/1単位 | 500円 |
神奈川県 | ・横浜修悠館高校 ・厚木清南高校 |
・平日講座 700円/1単位 ・日曜講座 350円/1単位 ・IT講座 350円/1単位 |
なし |
千葉県 | ・千葉大宮高校 | 330円/1単位 | 500円 |
愛知県 | ・愛知県立旭陵高校 ・刈谷東高校 |
336円/1単位 | 500円 |
大阪府 | ・桃谷高校 | 最大9,900円 | 500円 |
兵庫県 | ・青雲高校 ・網干高校 |
約8,000円 | 500円 |
広島県 | ・東高校 ・西高校 |
330円/1単位 | 500円 |
公立の通信制高校の学費は格安!
公立の通信制高校は入学金が500円程度、授業料は1単位あたり330円前後と格安で学べます。
なお、授業料以外に教科書代や設備費、生徒会費などがかかります。それでも年間で1~2万円程度です。
私立の通信制高校とは
私立の通信制高校には、学校法人のほかに株式会社が設置運営しているものもあります。学区の限定は特になく複数の都道府県にキャンパスがある「広域通信制高校」と1つの都道府県だけ、または隣の府県など狭い範囲を通学圏にしている「狭域通信制高校」があります。
広域の通信制高校の例
広域の通信制高校は本校の他に、全国各地に学習センターや協力校などのキャンパスを設けています。
また、私立の通信制高校の学費は下記のように公立よりも高くなっています。
学校名 | 本校所在地 | キャンパス (協力校・学習センター) |
授業料 |
---|---|---|---|
NHK学園高校高等学校 | 東京都国立市 | 全国31ヶ所 | 授業料:1万円/1単位 |
八洲学園高等学校 | 大阪府堺市 | 関西と関東に複数校 | 入学金:2万円 授業料:1万円/1単位 |
ヒューマンキャンパス高等学校 | 沖縄県名護市 | 全国43ヶ所 | 入学金:1万円 授業料:8,500円/1単位 |
第一学院高等学校 | 茨城県高萩市 | 全国50ヶ所 | 入学金:1万円 授業料:1万円/1単位 |
鹿島学園高等学校 | 茨城県鹿嶋市 | 全国各地に多数 | 入学金:5万円 授業料:7,000円/1単位 |
キャンパスの数や入学金、授業料は2018年10月時点のもので、変更になる場合があります。また、授業料の他に諸費用が必要になります。
狭域の通信制高校の例
狭域の通信制高校は地域限定で生徒を受け入れています。いくつかの例をご紹介します。
学校名 | 本校所在地 | 受験可能地域 | 入学金 授業料 |
---|---|---|---|
青森山田高等学校 | 青森県青森市 | ・青森校(青森県、秋田県、岩手県) ・札幌校(北海道全域) |
入学金:3万円 授業料:年間144,000円 |
松栄学園高等学校 | 埼玉県春日部市 | 埼玉県、東京都、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県 | 入学金:0円 授業料:8,000円/1単位 |
司学館高等学校 | 滋賀県東近江市 | 滋賀県、京都府 | 入学金:2万円 授業料:学習方法によって異なる |
誠英高等学校 | 山口県防府市 | 山口県、島根県 | 入学金:3万円 授業料:8,000円/1単位 |
入学金、授業料は2018年10月時点のもので、変更になる場合があります。また、授業料の他に諸費用が必要になります。
狭域の通信制高校は入学できるエリアが限定されていますが、スクーリングなど通学には近いので便利です。
私立の通信制高校の数が急増
不登校や経済的な理由など、さまざまな事情で高校に通えないという人が多くいます。それでも高卒資格を取得して就職したいという人にとって、通信制高校は人気があります。
特に近年は私立の通信制高校の数が増加しています。
公立と私立の通信制高校の数の推移
下の表のように平成11年は通信制高校は全国で104校しかなく、しかもその約67%が公立で、広域の通信制高校は全国でも14校しかありませんでした。その後、少しずつ私立が増えていき、平成24年には私立の通信制高校が140校(広域が80校、狭域が60校)となり、通信制高校全体の約65%を占めるまでに増加しました。
年度 | 公立校 | 私立(広域) | 私立(狭域) | 合計 |
---|---|---|---|---|
平成11年 | 70 | 14 | 20 | 104 |
平成12年 | 69 | 21 | 23 | 113 |
平成13年 | 70 | 21 | 28 | 119 |
平成14年 | 68 | 29 | 31 | 128 |
平成15年 | 68 | 37 | 33 | 138 |
平成16年 | 70 | 44 | 38 | 152 |
平成17年 | 76 | 56 | 43 | 175 |
平成18年 | 76 | 63 | 46 | 185 |
平成19年 | 75 | 67 | 50 | 192 |
平成20年 | 72 | 75 | 50 | 197 |
平成21年 | 72 | 79 | 54 | 205 |
平成22年 | 73 | 79 | 57 | 209 |
平成23年 | 74 | 78 | 58 | 210 |
平成24年 | 77 | 80 | 60 | 217 |
公立と私立の通信制高校の特徴の違い
公立と私立の通信制高校の特徴には、次のような3つの大きな違いがあります。
- 費用
- サポート体制
- 選べる科目
それぞれを詳しく見ていきましょう。
公立と私立の通信制高校の費用の違い
通信制高校で学ぶための費用としては、単位ごとの受講料とテキスト代、レポートの郵送代、スクーリングに出席するための交通費などがあります。実習を伴う科目では別に材料費などがかかります。
また、学校によっては入学金が必要なところもあります。
入学金
公立 | 500円程度 |
---|---|
私立 | 1万円~24万円と高額(0円のところもあります) |
公立の場合はほとんどが500円程度ですが、私立では1万円~5万円、高いところでは24万円もかかるところがあります。
受講料
公立 | 1単位 | 330円~700円程度 |
---|---|---|
私立 | 1単位 | 5000円~12000円 |
受講料は単位ごとにかかります。最低でも74単位を修得するので、1単位の受講料×74が必要になります。
公立の場合は1単位あたり330円~700円程度なので、74単位取得するには24,400円(1単位330円の場合)が必要になります。一方、私立は1単位あたり1万円前後するところが多いため、74単位取得するには授業料だけでも74万円が必要になります。
その他諸経費
公立 | テキスト代など 1~2万円 |
---|---|
私立 | 5万円~30万円 |
通信制高校では教材費として教科書代やテキスト代がかかります。
他にレポートの郵送代がかかりますが、通信制高校の場合は第四種郵便物の扱いとなるため100グラムまでは15円で済みます。
また、私立校の中には週5日登校するシステムを取っている学校があります。その場合は通学のための交通費がかかります(学割が利用できます)。制服や体操服を指定しているところもあるので、その分の費用も事前に調べておきましょう。
なお、学費を捻出するのが厳しいという方は就学支援金を利用する方法があります。支給金額は公立よりも私立のほうが高く、また、家庭の年間収入が低いほど高くなります。
詳しくは入学を希望する通信制高校に直接問い合わせるか、以下の記事をご覧下さい。就学支援金制度と共に公立と私立の学費の違いについて詳しく解説しています。
サポート体制の違い
通信制高校は基本的に自宅での学習が中心になります。単位ごとに学習を終えるとレポートを提出しますが、ときには難しくて学習が進まないということがあります。
そんなときにサポート体制が整っていると安心して学習できます。
公立の通信制高校はサポートが弱い傾向
通信制高校の学習には、本人の強い意志が必要です。公立校は特にその傾向が顕著で、本人の自主的な意欲に任せられている部分があります。
もちろんわからないところは質問すれば教えてもらえますが、中学校の授業についていけなかった人や中卒・高校中退から年数が経過して勉強を忘れてしまった人などには難しく思えるかも知れません。
私立の通信制高校はサポートが手厚い
その点、私立はそれぞれの理解度に応じたサポートをしてくれます。場合によっては小学校の内容にまで戻って教えてくれることもあります。逆に大学進学を目指す人には進学コースが設けられています。それぞれの目的や理解度に合わせたサポートがあるのが私立の魅力だといえます。
また、不登校や対人関係での悩みなど精神的な面でのサポートも、カウンセラーを常駐させるなど私立校の方が充実しています。
公立と私立の通信制高校の科目の違い
公立校は必修科目を中心に全日制高校と同じような科目を学習する普通科がほとんどです。
一方、私立では必修科目に加えて芸能・芸術・アート・声優・美容・調理・介護・スポーツなどさまざまなコースが設けられています。科目のバラエティも豊富なので楽しく学ぶことができます。
提携している専門学校に入学しやすいとか、就職に役立つ資格が取れるなども私立校のメリットだといえます。
私立の通信制高校の多彩なコース
私立の通信制高校のコースをいくつかご紹介します。
コース | 内容 |
---|---|
大学進学コース | ・志望校に合わせた受験科目を重点的に学習 ・小論文や面接の指導 ・難関校合格のために予備校と連携 |
美容師コース | ・美容師の国家資格合格を目指す |
調理師コース | ・調理師やパティシエ、パン職人などを目指す |
美容コース | ・志望校に合わせた受験科目を重点的に学習 ・小論文や面接の指導 ・難関校合格のために予備校と連携 |
芸能コース | ・俳優・女優、ミュージカル、タレント、 ダンス、作詞・作曲、アイドルなど さまざまなコースがある |
マンガ・アニメコース | ・マンガ家、イラストレーターを目指す人のコース ・アニメ制作 ・ゲーム制作 ・アニメの声優コース など |
スポーツコース | ・スポーツトレーナーを養成 |
私立の通信制高校は通学も可能
上記のように私立の通信制高校にはさまざまなコースがあるため、形は通信制でも通学日数が多くなります。
とは言っても、通学は全日制のように毎日朝から5時間目までビッシリ授業ということはなく、下記のように自由に選べるスタイルになっているところが多いようです。
- 週に2日だけ通学
- 半日だけ通学
- 午前中は自宅学習で、午後は実習のために通学
他にもさまざまなスタイルがあるので、自分の学びたいスタイルを探してみましょう。
私立の通信制高校は部活動や修学旅行も充実
一般的に公立の通信制高校では単位ごとにスクーリングに出席しますが、それ以外はほとんど登校することがありません。
そのため、部活動なども積極的に行われていません。
一方、私立の通信制高校は上でも書いたように週に何度も通学できるところがあります。そういった学校では部活動も行っているので、全日制の高校と変わらない高校生ライフが楽しめます。
また、修学旅行を実施している学校もあります。高校生らしい思い出が残せますね。
私立の通信制高校は学費は高いがメリットが多い!
私立の通信制高校は公立と比較すると学費が高いという特徴があります。
一方で次のようなメリットもあります。
・ユニークな学科やコースがある
・就職に役立つ資格が取得できる
・サポートが手厚い
・高校生ライフを楽しめる
私立の通信制高校は学費が高いのが難点ですが、「高等学校等就学支援金制度」の利用で学費を抑えることができます。詳しくは各学校で聞いてみましょう。