通信制高校の公立と私立の4つの違い|特徴や卒業率、サポートなど徹底比較
通信制高校には公立と私立の2種類がありますが、通うならどちらが良いのでしょうか。
そもそも公立と私立それぞれにどんなメリットとデメリットがあるのか、非常に分かりにくいです。
そこで当記事では公立の通信制高校と私立の通信制高校の様々な違いを解説していきます。ぜひ通信制高校選びの参考にして下さい。
公立と私立の通信制高校4つの違い
かかる学費(費用)が違う
学費は公立の方が安い
一般的に公立と私立の通信制高校では、公立のほうが段違いで学費が安いです。
学費の違いの例
- 公立:1単位辺り 180円~1,200円
卒業までにかかる費用 10~30万円 - 私立:1単位辺り 5,000円~13,000円
卒業までにかかる費用 30~120万円
一例として東京都立の通信制高校の場合、もっとも安い所では卒業までに25,000円ほどの費用しかからない所もあります。
一方で私立の通信制高校では年間だけで20万~80万もの費用がかかります。
私立は学費が高い代わりにサポートが充実
これはサポート体制の手厚さの有無やコースなどの選択肢の豊富さ、大学進学のしやすさなどが関係しており、一概にどちらが良いとは言えません。
人によっては公立でも全く問題ありませんし、反対に人によっては私立に行くことで人生の選択肢や可能性が大きく広がる人もいるでしょう。
通信制高校の学費(費用)に関しては以下の記事に全てまとめていますので、気になる方は合わせてご覧下さい。
メンタル面のサポートの充実度が違う
公立はほぼサポートなし
公立の通信制高校は基本的に通常の教師しかおらず、専属、有資格のカウンセラーによるメンタル面のサポートは基本的に受けられません。
私立は専属のスクールカウンセラーが常駐していることが多い
一方、私立の通信制高校は専属のスクールカウンセラーが常勤であることが多く、常勤でなくとも決まった曜日に学校に来ます。
また、提携のサポート校を活用することで発達障害や学習障害を持った方に対し、卒業までの手厚いサポートをしてくれる学校も増えています。
カウンセリングによりいじめやストレスから不登校になるリスクを軽減できるほか、過去にいじめ等の経験のある方は私立の方が安心でしょう。
登校や学習環境の自由度が違う
公立は日程や決まりが厳しい
公立は登校日こそ少ないものの、スクーリングや期末試験などの日程が学校で決められています。
そのため、不登校などの事情があっても決められた日にしっかり登校し、単位を取得する必要があります。
また、学習環境も私立のようにタブレットでなく、紙のレポートを提出する必要がある所が多いです。
私立は柔軟に対応してくれる
一方、私立は登校をしなくてもネットでレポートの提出ができたり、登校日を自分で調整できるなど自由度の高いところが多いです。
最近は無償で配布されるiPadのアプリにより、机に向かわずともいつでも好きなタイミングで勉強ができる通信制高校もあります。
スクーリング日も通常の週5だけでなく個人の希望に合わせて年に数回のみ、月に1回のみ、4泊5日の合宿のみでもOKなど柔軟です。
病気や体質の関係で毎日の登校が厳しい人でも私立なら問題なく卒業することできるので、学費以上のメリットがあるでしょう。
実際、このような背景からか近年は私立の通信制高校が高い人気を集めており、公立の約3倍の生徒が私立に通っています。
勉強の教え方やサポートの充実度が違う
公立は全日制とあまり差がない
公立の通信制高校は入学時点で中学卒業程度の学力があるという見込みで授業を行うので、全日制高校と同様に一度つまずいてしまうと人によってはついていくのが難しくなってしまいます。
そのせいで全日制から通信制高校に転入したのに、また勉強につまずいた結果、不登校になってしまう方もいます。これではわざわざ全日制高校から通信制に転校した意味がないでしょう。
公立と私立通信制高校の卒業率の違い
- 公立:約39%
- 私立:約97%
このように公立と私立では卒業率の大きな差が出ています。登校日数が少ないため、分からない部分があっても先生に質問しにくいのも公立の卒業率が低い要因でしょう。
費用が安いのは良いですが、子どもの将来を考えた時に卒業できないようでは少々厳しいのが現実でしょう。
私立はサポートが充実している
一方で私立は不登校の生徒や学習に苦手意識を持った生徒のため、中学1年生や場合によっては小学生レベルから再度勉強を教えてくれます。
また、学習の不明点があっても少人数・マンツーマンの指導に対応しているので質問がしやすく、自宅学習でもスマホや配布されたiPadでいつでも先生に質問できるので、公立のように学習が分からない間にどんどん授業が進んでつまずく心配がありません。
前述した通り費用は高くなりますが、子どもの学力に不安がある場合は私立の方が良いでしょう。
公立・私立の通信制高校について
公立の通信制高校について
公立の場合は、都道府県が通信制高校を設置していて、1都道府県内に1校以上の通信制高校があります。
中には複数の学校がある都道府県もあるため、全国では約70校ほどが存在します。
公立の通信制高校の学区は、基本的には同一都道府県内に住む人または勤務する人が対象になっています。
主な公立の通信制高校
全国の主な地域の公立の通信制高校をご紹介します。
都道府県 | 学校名 | 入学金 | 授業料 |
---|---|---|---|
東京都 | ・一橋高校 ・新宿山吹高校 ・砂川高校 |
336 円/1単位 | 500円 |
神奈川県 | ・横浜修悠館高校 ・厚木清南高校 |
・平日講座 700円/1単位 ・日曜講座 350円/1単位 ・IT講座 350円/1単位 |
なし |
千葉県 | ・千葉大宮高校 | 330円/1単位 | 500円 |
愛知県 | ・愛知県立旭陵高校 ・刈谷東高校 |
336円/1単位 | 500円 |
大阪府 | ・桃谷高校 | 最大9,900円 | 500円 |
兵庫県 | ・青雲高校 ・網干高校 |
約8,000円 | 500円 |
広島県 | ・東高校 ・西高校 |
330円/1単位 | 500円 |
先程も解説しているのですが、私立と比べると公立の通信制高校の学費は格安です。
公立の通信制高校は入学金が500円程度、授業料は1単位あたり330円前後と私立よりもかなり安く学べます。
なお、授業料以外に教科書代や設備費、生徒会費などがかかりますが、それでも年間で1~3万円程度です。
私立の通信制高校について
私立の通信制高校には、学校法人のほかに株式会社が運営しているものもあります。また、複数の都道府県にキャンパスがある「広域通信制高校」と1つの都道府県だけ、または隣の府県など狭い範囲を通学圏にしている「狭域通信制高校」があります。
広域通信制高校の場合、公立と違い学区の限定は特にないので、全国の何処からでも入学することができます。
公立は学校のある都道府県に住んでいる、あるいは働いている方しか通うことができません。
そのため、「県内に唯一ある公立通信制高校が家から遠くて通えない…」という方にはかなり不便だったのですが、私立であれば全国どこからでも入学して、通信学習をメインに卒業をすることが可能です。
広域の通信制高校の例
広域の通信制高校は本校の他に、全国各地に学習センターや協力校などのキャンパスを設けています。
学校名 | 本校所在地 | キャンパス (協力校・学習センター) |
授業料 |
---|---|---|---|
NHK学園高校高等学校 | 東京都国立市 | 全国31ヶ所 | 授業料:1万円/1単位 |
八洲学園高等学校 | 大阪府堺市 | 関西と関東に複数校 | 入学金:2万円 授業料:1万円/1単位 |
ヒューマンキャンパス高等学校 | 沖縄県名護市 | 全国43ヶ所 | 入学金:1万円 授業料:8,500円/1単位 |
第一学院高等学校 | 茨城県高萩市 | 全国50ヶ所 | 入学金:1万円 授業料:1万円/1単位 |
鹿島学園高等学校 | 茨城県鹿嶋市 | 全国各地に多数 | 入学金:5万円 授業料:7,000円/1単位 |
キャンパスの数や入学金、授業料は記事執筆時点での数字のため、変更になる場合があります。
また、1単位辺りの授業料は公立の330円と比べるとかなり高額ですが、令和2年4月より世帯年収に応じて最高で12,030円/1単位の支援金を利用できます。
そのため、学費は高額ですが家庭によっては無料、もしくは負担を大幅に軽減することができるでしょう。
※入学金、授業料の他に教科書代など諸費用が必要になります。
狭域の通信制高校の例
狭域の通信制高校は生徒が在住している都道府県、あるいはその近隣の都道府県限定で生徒を受け入れているところが多いです。
そこでいくつか代表的な例をご紹介します。
学校名 | 本校所在地 | 受験可能地域 | 入学金 授業料 |
---|---|---|---|
青森山田高等学校 | 青森県青森市 | ・青森校(青森県、秋田県、岩手県) ・札幌校(北海道全域) |
入学金:3万円 授業料:年間144,000円 |
松栄学園高等学校 | 埼玉県春日部市 | 埼玉県、東京都、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県 | 入学金:0円 授業料:8,000円/1単位 |
司学館高等学校 | 滋賀県東近江市 | 滋賀県、京都府 | 入学金:2万円 授業料:学習方法によって異なる |
誠英高等学校 | 山口県防府市 | 山口県、島根県 | 入学金:3万円 授業料:8,000円/1単位 |
入学金、授業料は執筆時点のものですので、変更になっている場合があります。詳細は無料で請求できる資料を確認して下さい。
通信制高校選びに迷ったら
また、狭域の通信制高校でも授業料の他に諸費用が必要になります。
狭域の通信制高校は入学できるエリアが限定されていますが、年に1~数回あるスクーリングの際の通学は比較的楽です。
広域の通信制高校だと年に1回、スクーリングのために旅行も兼ねてですが沖縄の本校まで行かなくてはいけないケースなどがあります。
公立通信制高校と私立通信制高校の違いまとめ
通信制高校の学費だけを見ると「安ければ安いほど魅力的」と思ってしまいがちですが、学校選びは費用面だけでなく、さまざまな観点から比較検討することが大切です。
特に不登校や引きこもりといった心の悩みをかかえている学生の場合、高いカウンセリング能力と指導力を兼ね備えた教師にサポートしてもらえるのと、サポートをしてもらえないのとでは将来に大きな違いが出てきます。
もちろん少しでも諸費用が抑えられたら助かりますが、高校の3年間は人生を左右しますので、費用よりもどの通信制高校が一番相性が良く、将来のためになるのかを考えましょう。
そのためには複数の学校をよく比較検討し、一番良いと思った学校のオープンキャンパスや説明会に何度か足を運ぶのが重要です。
ネットの情報だけでなく、実際に資料や自分の目で見た情報で良いと思った学校に通うと良いでしょう。