通信制高校から大学進学を目指す!進学率はどれくらい?
通信制高校はさまざまな事情で高校に進学できなかった人や高校を中退した人が通信教育で学び、高校卒業資格を取得する学校です。
しかし、単に高校卒業資格を得るだけでなく、通信制高校から大学に進学する人も多くいます。特に最近は大学進学のためのコースを設置している通信制高校がたくさんあります。
このページでは通信制高校から大学進学を目指す方法や進学率などについてご説明します。
全日制高校と通信制高校の大学進学率
全日制高校と通信制高校では、大学の進学率に大きな違いがあるのでしょうか?
全日制高校の大学進学率
文部科学省が2018年に発表した「学校基本調査」によると、平成30年3月に卒業した全国の全日制高校の生徒数は1,056,475人でした
その内、大学(短大、専門学校を含む)に進学したのは578,029人で、大学進学率は54.7%です。
全日制高校の進路状況
平成30年3月卒業の全日制高校の生徒の中で、普通科では63.8%が短大や大学に進学しています。専修学校への進学率は約16%で、就職する生徒は普通科全体の8.3%と少数です。
一方、工業科から大学への進学率は14.4%、就職する生徒の割合は68%、商業科から大学への進学率は27.3%、就職する生徒の割合は43.1%となり、進学するよりも就職する傾向が高くなっています。
なお、定時制高校の卒業者数は20,324人で、その内大学に進学した人の数は2,735人、大学進学率は13.5%となっています。
通信制高校の大学進学率
次に通信制高校の生徒の進路状況を見てみましょう。
文部科学省の同じ調査では、平成30年3月に通信制高校を卒業した生徒数は53,552人で、その内、大学に進学した人は9,885人、大学進学率は18.5%となっています。
通信制高校の卒業後の進路
なお、通信制高校の卒業後の進路は、下記のようになっています。
卒業後の進路 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
大学 | 9,885人 | 18.5% |
専修学校(専門課程)(※) | 11,343人 | 21.2% |
専修学校(一般課程)(※) | 704人 | 1.3% |
公共職業能力開発施設等入学者 | 490人 | 0.9% |
就職 | 10,505人 | 19.6% |
上記以外 | 19,869人 | 31.5% |
※:専修学校の専門課程とは高等学校卒業程度の人が対象で、高等学校における教育の基礎の上に職業や実際生活に必要な能力を育成するところです。
一方、専修学校の一般課程は特に入学資格は設けられておらず、教養の向上などを目的としています。大学受験の予備校なども含まれます。
通信制高校から大学進学できる4つの理由
通信制高校を卒業して大学に進学する生徒は18.5%もいますが、その背景にはいくつかの理由が考えられます。
(1)学力はあるが全日制高校に通うことに抵抗がある生徒が通信制高校を利用している
文部科学省が全日制高校を中退した生徒の学校を辞めた理由を調査した結果では、学業不振で中退した生徒の割合は低く全体の6%程度です。
昭和57年ごろは学業不振を理由にした生徒は20%程度いましたが、年々減少しています。一方で増加しているのは「学校生活への不適応」や「進路変更」です。別の高校への入学を希望したり、就職を希望するといった理由が目立ちます。
ただ、高校を中退すると「中卒」になってしまいます。そこで通信制高校に入り、高卒資格を取得するケースが増えていると考えられます。こういった生徒は決して学力が低いわけではありません。自分に合った通信制高校で学ぶことで、大学に進学していることがわかります。
(2)通信制高校の進路指導が充実している
通信制高校には公立と私立があり、多くは自宅学習になります。しかし、進路指導はしっかり行っています。特に私立の通信制高校では、個別相談に応じたり、さまざまなコースを設置したりして進路指導に力を入れています。
何らかの事情で全日制高校を選択しなかった生徒のやる気を汲んで、大学合格までサポートしているということが通信制高校からの大学進学率の高さに現れているのでしょう。
(3)大学受験用の授業が充実している
私立の通信制高校の中には「大学進学コース」を設けて、理系私立対策や難関国立大学対策など目的に合わせた受験対策を行っています。
また、大手予備校と提携してサテライト授業を受けたり、サポート校で個別授業をしたりといった学習方法が選べる点も大学進学を目指す人にとってメリットとなります。
(4)受験勉強に集中できる
全日制高校では受験科目以外の授業や部活動があります。しかし、通信制高校では必修科目は当然勉強しますが、それ以外の部活動などが少ないため、自分のやりたい勉強に集中できるというメリットがあります。
こういった理由から、通信制高校から大学に進学する人が多いのだと考えられます。
通信制高校での大学進学に向けたサポート
では、通信制高校では大学進学に向けて、どのようなサポートをしているのでしょうか。
特に私立の通信制高校ではさまざまなサポートを実施しているので、いくつかの例をご紹介します。
通信制高校の特進コース
通信制高校の中には「特進コース」を設けているところがあります。例えばある私立の通信制高校では「特別進学コース」があり、標準コースの学習に加えて現役予備校講師のライブ配信講座やWeb講座などを提供しています。
特にWeb講座は学校でも自宅でも何度でも繰り返し視聴できるので、わからないところを徹底的に学習できます。
難関校や小論文対策も充実
国公立大のセンター試験対策や看護・医療系大学講座、小論文の講座などもあるので、志望校合格に向けてスムーズに学習が進められます。
通信制高校の個別指導
全日制高校の授業は1クラス30人~40人ほどいます。年間のカリキュラムに沿って授業が進められますが、途中でわからなくなったり、ついていけなくなったりしても、自分から先生に質問に行かなければ解決することはできません。
また、教える側も多くの生徒に一斉授業をするため、個々の生徒の理解度にまで配慮できないのが現状です。その結果、どうしても自助努力するか、学校とは別に学習塾を利用するしか方法はありません。
しかし、通信制高校では、個別授業に力を入れているところがたくさんあります。
マンツーマンや少人数授業で学力に合わせた指導を実施
個別指導や少人数授業のメリットは、生徒のつまずいている点や理解できていない点を教師がいち早く気づける点にあります。わからないところをそのままにせずに着実に理解してから次に進めるので、学習の成果が出やすいのです。
勉強の楽しさを実感できる上に、教師と密に進路相談ができる点が通信制高校のいいところだと言えます。
生徒に合わせたカリキュラム
生徒によって学力には差がありますし、得意科目・不得意科目も生徒によって異なります。そこで通信制高校では、生徒ひとりひとりに合わせたカリキュラムを組んでいます。
通信制高校は基本は自宅学習が中心ですが、大学進学を目指す人にはキャンパスでの通学を可能にしているところがたくさんあります。とは言っても全日制高校のように週5日、毎日5時間授業ということはなく、先生と一緒に考えたカリキュラムに沿って登校し、わからない点を教えてもらうことができます。
受験に強い予備校と連携
通信制高校の中には受験に強い大手予備校と連携しているところがあります。
受験はその年によって試験内容の傾向が異なります。受験勉強と言えば志望校の過去問題集を取り組む人が多いと思いますが、受験は最新情報を得ることが重要です。2~3年前の過去問を一生懸命勉強しても、自分が受験するときには出題の傾向が変わっている可能性があります。
そういった最新情報は予備校や大手進学塾が研究しているので、それに沿った学習をするのが合格への近道です。
私立の通信制高校の中には、こういった予備校や進学塾と提携して最新情報を入手しています。さらに予備校で使用しているテキストや問題集を使ったり、サテライト授業を受けたりできるところもあります。
回り道をせずに合格に進んでいけるのがメリットだと言えるでしょう。
通信制高校で指定校推薦をもらう方法も
通信制高校では提携している大学に指定校推薦で受験できるところがあります。公立の通信制高校でも推薦を出してくれるところもあります。
また、グループ校同士が連携していて、受験しやすい配慮をしているところが多くあります。全日制高校で学ぶより、通信制高校の方が指定校推薦を受ける場合の競争率が低いため有利かも知れません。
通信制高校から大学に合格した例
多くの通信制高校では大学の進学実績を公表しています。
通信制高校で学んで国公立大学や私立の医学部、理工学部など難関大学に合格する人も多くいます。
通信制高校から国公立大学に合格した例
通信制高校の中でも特進コースや大学進学コースを設けている学校では、次のような大学に合格実績があります。
- 京都大学
- 千葉大学
- 東京工業大学
- 大阪府立大学
など
通信制高校から私立大学に合格した例
通信制高校から私立大学への合格実績としては、次のような例があります。
- 早稲田大学
- 慶応義塾大学
- 上智大学
- 中央大学
- 同志社大学
- 立命館大学
- 明治大学
- 青山学院大学
- 法政大学
- 仙台大学
- 近畿大学
など
これらはごく一部の例です。各通信制高校では全国の大学に合格実績をあげています。
通信制高校選びには大学合格実績を見るのがポイント
通信制高校で学びながら大学進学を希望する人は、まず各通信制高校の大学進学への取り組み内容や過去の合格実績などを調べてみましょう。進学に力を入れている通信制高校では、ホームページに特進コースや進学コースの有無、進学への取り組み、合格実績などを掲載しています。
その中で自分に合った学校を選ぶのがポイントです。
また、事前に資料請求をしたり、学校説明会に参加したりすると、より学校の取り組み姿勢がわかるのでおススメです。