発達障害があっても通信制高校なら安心!その理由とは?受け入れ高校も紹介!
通信制高校はさまざまな事情で高校進学ができなかった人や高校を中退した人が通信教育で高校卒業を目指す学校です。
高校に進学できなかった理由は経済的な問題だけでなく、不登校や学校の勉強を理解できず高校受験に不安があるなどさまざまです。
中には「発達障害」があり、全日制高校への進学を断念した人もいます。そういった人でも、通信制高校でサポートを受けながら高校卒業を目指すことができます。
このページでは発達障害の人が通信制高校で学ぶ意義や学校側のサポート体制などについてご紹介します。
発達障害とは何?
まずは発達障害とは何なのかについて見ていきましょう。
発達障害は主に次のタイプがあります。それぞれの特性と合わせてご紹介します。
発達障害のタイプ | 特性 |
---|---|
自閉症 (自閉症スペクトラム) |
・他人との社会的関係の形成が困難 ・言語の発達の遅れ ・興味や関心が狭く特定のものにこだわる ・3歳くらいまでに現れる |
高機能自閉症 | 上記自閉症の特性があるが知的発達の遅れを伴わない |
学習障害(LD) | 全般的な知的発達の遅れはないが、聞く、話す、書く、読む、計算する、推論する能力のうち特定のものが著しく困難な状態 (ただし、視覚障害や聴覚障害、知的障害、情緒的障害または環境的な要因が直接の原因となるものではない) |
注意欠陥・多動性障害 (ADHD) |
年齢または発達に不釣り合いな注意力または衝動性、多動性があり、社会的な活動などに支障をきたすもの |
これらは生まれつき脳の一部の機能に障害があるもので、ひとりの人にいくつかの障害が現れることもあります。また、同じ障害を持つ人でも、症状の現れ方が異なることがよくあります。
広汎性発達障害
アスペルガー症候群と高機能自閉症を合わせて「広汎性発達障害」と呼ばれています。アスペルガー症候群は自閉症の中でも言語の発達の遅れがなく、知的発達の遅れを伴わないタイプのことを指します。コミュニケーションや対人面で障害があり、特定のものへの強い関心や興味を持つという特性があります。
発達障害の分類は難しい
発達障害は平成17年に施行された「発達障害支援法」で、自閉症、アスペルガー症候群とその他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害などの障害を持つ人を援助することが定められています。
この法律では発達障害の早期発見、国や地方自治体が発達支援を行うこと、発達障害者の自立や社会参加への支援を行うことなどが明文化されています。
ただ、現実には自閉症とADHDのように複数の発達障害の特性を持つ人や、診断の結果、発達障害とはみなされない「グレーゾーン」の人もいます。
特にグレーゾーンの人は診断基準を満たしていないものの多動やこだわり、コミュニケーションが苦手などの特性があります。
そのため、周囲の人に理解されず、いじめを受けたり、学校や団体になじめないなどで苦労することがあります。
発達障害がある人でも通信制高校なら安心
発達障害があると症状の程度にもよりますが、通常の授業を受けるのが困難になります。中学校の授業が理解できないとか集団生活に抵抗を感じるといった理由で、全日制高校への進学をあきらめる人がいるかも知れません。
しかし、通信制高校ならば比較的無理なく進学し、卒業することができます。
通信制高校での発達障害の生徒の割合
平成23年度に実施された「高等学校定時制課程・通信制課程の在り方に関する調査研究」によると、通信制高校に通う生徒の中で特別な支援を必要とする生徒の割合は下記の通りとなっています。
- 特別な支援……8.5%
- 学習障害……1.5%
- 発達障害……3.0%
このように何らかの支援を必要とする生徒でも通信制高校で学んでいることがわかります。なお、こういった調査には反映されない「グレーゾーン」の生徒もいると考えられるため、実際はその割合はもっと高くなる可能性があります。
通信制高校が発達障害の人に向いている理由
では、どうして発達障害の人が通信制高校に向いているのでしょうか?その理由としては、次の点があげられます。
- 入学と卒業が比較的簡単
- 登校するのは年に数日なので人との関わりが少ない
- 自分のペースで学習できる
- 自分の得意な分野に力を入れて学習できる
- サポート体制がある
では、ひとつずつご説明していきましょう。
通信制高校は入学と卒業が比較的簡単
全日制高校は入学試験があり、高校ごとに定員や合否ラインがあります。特に人気高校は競争率が高く、狭き門になります。中学校の内申書(調査書)も合否判定に影響を与えます。
そのため、発達障害があり入学試験の点数が合格ラインに届かなかった場合は入学することができません。
しかし、通信制高校の入学試験の多くは面接と作文、書類審査などで行われます。中には学科試験を実施するところもありますが、全日制高校ほど難しいものではありません。
発達障害がある人でも比較的合格しやすいのが通信制高校のメリットだと言えます。
通信制高校は卒業しやすい
全日制高校を卒業するには「3年間」で「74単位以上を修得すること」という条件があります。
3年間で所定の日数(時間数)を登校し授業を受け、定期試験で一定以上の点数を取ることで単位を修得します。この条件に満たないと「留年」となり、卒業が遅くなってしまいます。
しかし、通信制高校は「3年以上」で「74単位を修得する」ことが卒業の条件です。単位は課題レポートの提出と添削指導、一定時間のスクーリングに参加し、試験に合格することで修得できます。また、登校はスクーリングと特別活動という学校行事に参加することのみなので、全日制高校ほど多くはありません。
発達障害の人でも無理なく卒業を目指せます。
登校は年に数日だけ
通信制高校は毎日学校に登校することがなく、教室で一斉授業を受けることもほとんどありません。
自宅や図書館で教科書を見ながら課題レポートを作成し、郵送して添削指導を受けます。その後、月に1回または学期ごとに数日、登校してスクーリングという面接指導を受けます。
発達障害の中にはじっと座っていることが苦手とか、他の人との関わりが難しいという人がいますが、そういった場合でも自宅学習なので自分の好きな環境で勉強を進められます。
自分のペースで学習できる
全日制高校のように教室で一斉授業を受ける場合は、授業が理解できないと次第に勉強が遅れていき、ついていくのが大変になります。
その結果、学校がつまらなくなり不登校や退学につながるケースが多々あります。
しかし、通信制高校ならわからないところを何度でも何時間でも勉強することができますし、先生に電話やメールまたは学校で質問することができます。
自分のペースで学習できるので安心して取り組めますね。
自分の得意な分野に力を入れられる
全日制高校の普通科は主要5科目を中心にさまざまな教科をバランスよく学習します。
しかし、発達障害の人はある特定のものに強い関心を示す特性があるため、興味のない科目の授業を受けるのは苦痛に感じてしまうでしょう。
通信制高校なら必修科目は受講しないといけませんが、それ以外は各学校が設けているコースや選択科目で自分の好きな勉強ができます。
例えばゲーム制作やアニメなど趣味や将来の夢につながる勉強ができます。専門学校ではなく高校卒業を目指しながらこのような専門性の高い勉強ができるのが通信制高校のメリットです。
サポート体制がある
全日制高校は担任の先生が約30人前後のクラスの生徒すべてを把握し、指導しなければいけません。そのため、生徒の側から見れば「自分のことを理解してくれていない」と不満に思うことがあります。
ところが通信制高校はクラスがない(通学コースでは少人数クラス)ので、先生は1対1で対応してくれます。
学校によっては個人相談室やサポート室でじっくりと話を聞いてもらえます。このような手厚いサポートがあると安心ですね。
発達障害の人におススメの通信制高校
通信制高校とひと口に言っても、多くの種類があります。発達障害のある生徒が選ぶ場合は、次の点に注意しましょう。
- 発達障害に対して理解があること
- 発達障害の知識を持つスタッフが常駐し、個別にケアしてくれること
- SST(社会生活技能訓練)、生活力・自己表現力、ライフプランなどについて学べる授業があること
これらのすべてがそろっているのが理想ですが、どれか1つがあるかどうかを確認してみましょう。
発達障害を持つ生徒に対して理解があり、受け入れてくれる通信制高校の例をご紹介します。
兵庫明石高等学院
兵庫明石高等学校は発達障害支援の実績が豊富な「明石 波の家福祉会」が運営する高校です。
同会は児童発達支援事業所や就労支援施設などを運営していますが、兵庫明石高等学校は「勇志国際高校」と提携し、発達障害のある生徒への高校卒業をサポートしています。
2018年4月現在の生徒数は92名と小規模ですが、発達障害支援の理解と実績があるのでおススメです。
兵庫明石高等学校のサポート
兵庫明石高等学校には、常時臨床心理士、公認心理士、言語聴覚士などの専門家が多数在籍し、カウンセリングやSSTなどの専門的なサポートが受けられます。
また、福祉施設を併設することにより授業料負担が年間約10万円台に抑えられています。
同校は通学制ですが、運営元の波の家福祉会が卒業まで様々なサポートを行い、年に1度、4泊5日の日程でスクーリングを行っています。また、授業が終わった後に、併設の施設にてスポーツ・清掃・パソコン・ソーシャルカリキュラムなどのトレーニングを行っています。
明蓬館高校
明蓬館高校は広域の通信制高校です。SNEC(すねっく)という「スペシャルニーズ・エディケーションセンター」を設けて、発達障害を持つ生徒のサポートを行っています。
明蓬館高等学校のサポート
明蓬館高校のSNECは特別支援教育コースで、発達障害児の指導や支援スキルを持つ職員と心理士(相談員)が常駐し、指導と療育を実施しています。
「学習障害(LD)」や「注意欠如・多動性障害(ADHD)」と診断された生徒の受け入れ体制を整えており、自立させたいという親の思いをくみながら高校卒業を目指します。
同校では次のような取り組みを行っています。
自分のペースで学習 | 生徒の特性に応じて、学習しやすい環境を提供。一斉授業ではなく、パソコンやタブレット端末を使ってネット授業を実施 |
学習成果物で成績を評価 | 成績は定期テストではなく、履修科目ごとに作成した『学習成果物(ポートフォリオ)』で評価 |
一人ずつの支援計画 | 一人ひとりの特性を見極めてうえでそのニーズに合った支援計画を作成。校長、個人担任、各教科担当教員が共同してチームで卒業までをサポート |
このように発達障害がある人でも不安なく学べる環境を提供しています。
発達障害がある人はまず相談を
上記の2校は特に発達障害の支援を全面的にアピールしている通信制高校ですが、他にも相談に応じてくれる学校はたくさんあります。
通信制高校は自宅学習が中心なので、自分のペースで進められるというメリットがあります。その場合でも、発達障害の特性に応じた学習計画を立てることが大切です。
通信制高校を選ぶ場合は、サポート面もよく確認するようにしましょう。
不安な場合は問い合わせてみると答えてくれます。まずは資料請求をしてみてください。